ロイヤルホストモーニングはオアシス

先日初めて巷で話題のロイヤルホストモーニングデビューをした。実に映えある初めて記念日だ。

数多くのSNS投稿を目にし、ドラマのシーンにも登場し、ずっと気になっていたものの、なかなか行くきっかけを掴めずにいた。

そんなある日、朝目が覚めた。その日は朝イチで訪問の予定があった。そしてひらめいた。確かあの駅にロイヤルホストがあったなと。

思い立ったが吉日。普段は起きてダラダラしてしまいがちなのに、ロイヤルホストの7文字を頼りに猛スピードで支度をした。ひょっとすると光の速さより速かったかもしれない。

駅まで歩く道が輝いて見えて、空気が美味しく感じられて、足並みも軽やかだった。楽しみなことがあるとこんなにも日々が彩られるのだと感心した。

目的の駅に到着し、ロイヤルホストへと向かった。ここ最近Googleマップと波長が合わず、真反対に歩き始めてしまったが、そんなことも気にならないくらい、心はご機嫌だった。

そして辿り着いた。看板のオレンジはまるで太陽に見えた。
お店に入ると、紳士的な雰囲気を纏う店員さんが先に案内してくれた。
ふかふかの赤いソファー、広々としたテーブル、コーヒーとパンの混ざり合う幸せな香り。
この会えない幸せだった。

モーニングメニューを眺めながら、モーニングプレート(スクランブルエッグ)を注文した。

待っている間に飲み物を準備しようとドリンクバーへ向かった。ドリンクバーってどうしてこんなに私を幸せにさせるのだろう。ロイヤルホストのドリップコーヒーとオレンジジュースを注いで、席へと戻り、懐かしい気持ちになった。

なぜかというと、学生の頃に留学していたスペインで、朝ごはんにコーヒーと果汁を絞ったオレンジジュースをよく飲んでいたからだ。これはスペインの朝の習慣らしく、8年経った今でもそのルーティンが体に染み込んでいることがなんだかうれしかった。

思い出に浸っていたら、お待ちかねのプレートが運ばれてきた。こんがり焼けたトーストとふわふわのスクランブルエッグ。美しい湾曲を描くソーセージ。目にやさしい野菜の緑。幸せを具現化するならこれだなと思った。

 

普段朝ごはんにお米ばかり食べているからか、久しぶりのパンが五臓六腑に沁みた。一口目はそのまま、二口目はバターを塗った。我が胃とバターの感動的再会を見守った。

 

食べ終えると紳士的な店員さんがやって来て、飲み物のおかわりは自由ですからね!思う存分飲んでってください!と声をかけにきてくれた。やはりロイヤルだ。

 

食べ終えてまだ少し時間があったので、久しぶりに読書をした。活字を読む行為は心の余裕がある時にしかできなくて、なかなか時間を割けなかったものの、触れるとやっぱり心地よい。

 

日々タイムパフォーマンスや時短が謳われる中で、ほっと一息つけるこの時間はこの上なく尊いものだと思えて、これからも積極的にそんな時間を作っていきたいと思ったそんな朝だった。

 

焼きそばとシャケ

今日の晩ご飯は何にしようかと、脳内に自宅の冷蔵庫の中身をインプットしながら考えた。

そういえば、鍋用に買った豚肉とキャベツともやしが余っていたと思い、帰り道のスーパーで焼きそばの麺を買った。

【3袋100円】

一人暮らし民にはありがたい数字だった。

 

帰ってフライパンに火をかけ、油をひき、冷蔵庫で私の帰りを待っているであろうメンバーたちを炒めた。

さっき買った麺を投入し、水を少し加えてほぐしながら、付属の粉末をパラパラとかけていく。

この粉末をかけると、どうしてこんなにも美味しくなるのだろうといつも思う。秘密のパウダーなのだろうか。

 

出来上がった焼きそばをお皿に盛り付け、かつお節をふった。するとかつお節は熱気をまとい、まるでフラダンスかのように踊っているように見えた。

焼きそばを作り終えた後、朝作っておいた、お味噌汁を温めた。一人暮らしをして一年半が経つが、初めてちゃんとしたお味噌汁を作った。

 

「いただきます」と誰もいない部屋で手を合わせて呟き、焼きそばを一口啜った。

 

すると、頭の中にお皿に盛られた鮭の塩焼きが浮かんだ。そういえばそうだった。我が家では母が焼きそばを作るときは、いつもきまって鮭の塩焼きが出てきた。あとお茶碗にもらえた山盛りのご飯も一緒に。

 

何でいつもその組み合わせなの?と聞いては、
「魚は体に良いからね」と母は答えていた。

その度に私は「焼きそばは炭水化物で、ご飯も炭水化物だから、ご飯は明日の朝に食べるね」と言った。

母にとって私はいくつ歳をとっても子供なのだろう。いつまでも私が食べ盛りの中学生のままの胃袋だと思っているらしい。

 

そんな懐かしい思い出を回顧しながら、焼きそばを食べていたら、そんな暖かい光景を思い出し、目頭がジーンと熱くなった。

 

今度実家に帰ったら、お母さんの作る焼きそばが食べたいな、もちろん鮭の塩焼きも一緒に。

その時はご飯も大盛り食べるね。

あと、私お味噌汁作れるようになったんだよ。ちゃんとかつお節から出汁をとって、わかめ、油揚げ、ネギを入れて作ったんだ。

 

増えるわかめって少し入れただけなのに、あんなに増えるんだね、作るまで知らなかった。

そんなことを心の中で唱えながら、いつもより少ししょっぱい焼きそばを食べた。

夏の終わり、秋のはじまり

今年の夏は暑かった。とにかく暑かった。

 

駅までの8分間で滝のような汗が流れるほど、年に片手くらいしか食べないアイスを思わず買ってしまうほど暑かった。 

 

夜風とともにビアガーデンで飲んだビール

ズボンをまくって入った川の冷たさ

カラカラと氷が音を立てるアイスコーヒー

 

暑いからこそ涼しさが際立った。

 

8月が終わり9月も中盤に差し掛かった今日この頃。

 

ちょっと近くの八百屋さんとスーパーまで、と外に出た。

玄関のドアを閉め、ひと呼吸してわかった。

 

夏が終わり、秋がはじまる匂いがした。

カレンダーには「秋分の日」の文字。

やっぱりなと納得した。

一年で1番胸の奥がキュッと苦しくなる季節。

 

自転車置き場で顔が見えなくなるまで話し続けたこと。

少しでも長く一緒にいたくてわざと遠回りをしたこと。

付き合っている意味がわからないと言われたこと。

 

まるで一瞬であの頃に戻れそうな、切なさと懐かしさが混ざり合うようなそんな匂い。

 

季節の匂いってあると思う。

 

春は生ぬるく期待と不安の混ざる匂い

夏はなんでもできてしまいそうな匂い

秋は夏にも冬にもなりきれない匂い

冬は静かにゆっくりと始まりへと向かう匂い

 

そんな季節の変わり目を匂いで感じる瞬間がたまらなく好きだ。

 

そんなことを考えていたらスーパーに着いた。

 

さつまいも、栗、梨、秋刀魚。

 

秋の旬と呼ばれる食材たちが我こそはと胸を張っているように見えた。

 

買い物バッグを肩にかけて家路を急いだ。

空を見上げるとそこには白くて小さい月。

 

今年こそ、今年こそは、悲しい瞬間よりもうれしい瞬間が上回りますように。

 

苦手なこの季節を少しでも好きになれますように。

 

そう願いながら。

 

 

 

 

 

AIに太刀打ちできるかもしれない

転職をして2ヶ月。

SlackやGoogleカレンダーなどのテクノロジーに慣れ始めた頃。

前職で社内の連絡はLINE、予定管理は紙のスケジュール帳だった頃が懐かしい。

 

はじめは情報過多に圧倒されていたのに、今では快適にそれらのハイテクツールを使っている。慣れってやっぱりすごい。

 

Googleカレンダーのすごいところは、リマインドをしてくれるところだ。

【本日の予定は11時●●、14時△△...です】

【あと10分で●●との打合せが始まります】

私以上に私のことを知っている気がする。

 

そんな今朝も目が覚めてぼんやりと携帯を眺めていた。

いつも何気なく見ている日付なのに、今日はただの数字としての役割以上の可能性を感じた。

 

「あ、そういえばあの子の誕生日だ」 

すぐに脳内解析をして理解した。

それは学生時代の友達の誕生日だった。

 

1リットルの紙パックのレモンティーを飲みながら、制服で銀色の自転車に乗って田んぼの周りを駆け回る姿が脳裏に浮かんだ。遠い昔の余韻に浸っていたら、その数分後にLINEの通知が届いた。

 

「本日は●●さんのお誕生日です♪」

勝ったと思った。

そう、私の記憶力がAIに。

 

AIに代わる事柄が増えている中で、私の記憶力はまだAIに太刀打ちできるかもしれないなと思った。

 

そんなことを考えていたらパソコンの画面に

「あと10分で朝礼の時間です」

の文字が姿を現した。

「あっ忘れてた」

慌ててイヤホンを耳にセットし、参加ボタンを押した。

 

AIと私。

1勝1敗。

いい勝負かもしれない。

 

 

冷凍パスタから得た学び

ー金曜日の夜ー

 

まだかまだかと時計を気にして、定時と共に人々が街に解き放たれる。

 

本当は私もその一員になりたかったけれど、その日の仕事はその日のうちに終わらせたいマイルールに支配され、気付けば21時30分だった。

 

かれこれ職場に12時間近く居座ることになる。

 

「さあみんな帰りましょう!」と声をかけられてやっと職場を後にした。

 

この時間から入れるお店も少ないし、土日に楽しみな予定もあるから、今日は家でゆっくりすることにした。

 

近所のまいばすけっとでお酒を買った。

金曜の夜だけは好きなお酒を買っていいことにしている。これもマイルール。でも今回は良いほうのマイルール。しかも今週は週の目標を達成したので、2缶飲んじゃおう!

ビールとレモンサワーを両手に持ってレジへと進む。

 

「セルフレジがあるなんて今どきだなあ」と感動しながら、バーコードを読み取ると、

「お酒はこちらのレジでお会計できません」と断られてしまった。

「たしかにそうだよな」と我に帰った。

 

無事レジを済ませ、お店の外に出るや否や、プシュっと音を立てて缶ビールを開けた。

「これやってみたかったんだよなあ」と心の中で呟きながら家路を急いだ。

 

時刻は22時30分。

 

この時間に何か食べたら太るかなと一瞬脳裏にちらついたけれど、今日は金曜日だから何を食べても良いとまた新たなマイルールを作り、冷凍庫に眠っていたボロネーゼのパスタを温めた。

 

600Wなら6分30秒

800Wなら4分30秒

 

私の持っている電子レンジは900Wに対応しているので、4分くらいで良い感じの仕上がりなりそうだなとワクワクしながら1分、2分、3分と時間設定をしていたら、3分以上は進まなかった。

 

あれ?おかしいな?

 

もう一度【1分】のボタンを4回押そうとする。

またしても3分で終わり。

 

600Wにセットし再度【1分】のボタンを押す。

1分、2分、3分......6分!できた!

 

そうか、900Wでは3分までしか加熱できないのか。

一方で600Wであれば6分加熱ができる。無事パスタが出来上がる。

 

なんだか人生みたいだなと思った。

 

力を入れすぎるとすぐにバテてしまう。

その一方で、ほどよく力を入れればある程度の時間は持ち堪えることができる。

 

こんなただの冷凍パスタを加熱しただけなのに、何気ない些細な出来事なのに、常に120%の力で全力疾走している自分に刺さった。

 

そうだよ、もっと肩の力を抜いて、もっと省エネで、もっと軽やかに生きるってそう決めたじゃないか。

 

だいたいそんなことを考えるときは、疲れているか寝不足のどちらかなので、金曜の夜にしがみつくのはほどほどに、週末に備えて眠ろうと思う。

 

そして来週の金曜日は定時で帰ろう。

カフェインは無効です

いつからだろう、コーヒーを飲んでも眠くなってしまうようになったのは。

 

この前、喫茶店に行ってコーヒーの話になった。

 

「コーヒーを飲むと眠れなくなるので夕方以降は飲めないんですよね」

「そうなんですね、じゃあ例えば朝起きて眠気覚ましにコーヒーを飲んだらシャキッとしますか?」

「はい、眠れない特性を活かして試験前とかは夜に飲んだりしてました」

 

そんな会話をしながらここ数年を振り返ってみると、コーヒーを飲んでも眠くなることに気が付いた。

 

もしかしたら私は「コーヒーによって眠気を覚ます効果が得られるキャパシティ」を超えてしまったのかもしれない、そうあの日に...

 

それは遡ること7年前。

 

当時海外留学をしていた私はルームシェアをしていた。同居人は毎朝コーヒーを飲んでいた。それを隣で見ていた私もいつの間にかコーヒーを飲むことが習慣になった。郷に入っては郷に従えとはこのこと?なんて思っていた。

 

初めの方は毎朝飲むと目がパチっと開き、集中力スイッチがONになる感覚があった。その感覚が心地よくて、朝に限らず昼食の後や夕方にも飲むことが増えた。たぶん1日3杯くらい飲んでいたと思う。初めは強い効き目をはなっていたカフェインだったのだが、日を追うごとにその威力は徐々に右肩下がりになっていた。

 

そしてある日、コーヒーを飲むと胃の調子が悪くなるのが分かった。もしかするとコーヒーが体質に合わなくなったのかもしれない。

 

その日を境にコーヒーを飲みすぎると、少し胃もたれみたいな感覚があり、シャキッともパッチリともしなくなった。それどころか眠くなることさえある。

 

コーヒーで目覚める手段を失った私は今、眠くなってはいけない時の対応策に講じている。

 

飲み物がダメなら、スティックのりを嗅いでみるのはどうか?あの青くて塗ると透明になるアレ。高校の頃、お昼ごはん後の倫理の授業は必ず眠くなるので、よく嗅いでは必死に目を覚まそうとしていたことを思い出した。

はたまた、触覚に訴えかけるのはどうか。最近ロフトでよく見かける、動物モチーフのムニムニマスコットが気になっている。かわいいし癒されるけれど、かえって安心して眠くなったりしないかなと少し心配もある。

あと、激辛のミンティアもいいかもしれない。青色じゃなくて黒いパッケージのもの。1粒食べるだけで口内がまるで波の出るプールみたいにビッグウェーブが生まれるあの感覚。息を吸うだけでも爽快、吐いても爽快。さすがASAHI様。

 

きっとこれだけ対策すればコーヒーなしでも乗り切れるかもしれない。

 

とはいえコーヒーのことは大好きなので、食後に飲む習慣はこれからも続けたいし、お休みの日には美味しいコーヒーのお店に足を運びたい。でも胃の受け入れ体勢が(もはや耐性が)整っていないので、多くても1日2杯までにとどめ、美味しくいただきたい。

 

こんなことを考えていたら、携帯電話の画面に「このアドレスは無効です」のポップが表示された。前の職場のメールアドレスだった。

 

「この体にカフェインは無効です」

私の身体がもし携帯電話だとしたら、こんな文章が注釈としてつけられるかもしれない。

 

カフェインで目覚める威力はもう無効になったかもしれないけれど、これからもコーヒーを愛し続け、飲み続け、時にはちょっといい豆をコーヒーミルで挽いて、そんなふうに暮らしていきたい。

 

これからもこんな感じでゆるく言語化の練習をしていきたいです。